帝の変化

宮中に仕える婦人がたには二種類ある。一つは后、女御、更衣など、いわば特別職の方である。もう一つは、「上宮仕へ」の人であって、普通職の方である。主上のそばにいて、何かの御用をたすのは「上宮仕へ」の人であって、女御、更衣は特別のお召しで参上し、あそばの御用は役ではない。夜おそばに出ても暗いうちに下がるのであって、朝まで明るい日光がさすときまでおそばにいることはないのである。
この更衣は、夜から昼までひきつづいて、帝の前から去らないことすらあった。これでは「上宮使へ」とまちがえられる。それも主上の御寵愛のあまりに出ずるのであって、何かというとすぐお召しがある。
余人はさておいても、この更衣をお召し出しになる。まったく普通職の軽い身分かと思われるほどの扱いであった。それが若宮誕生とともにすっかり扱いが変わったのである。
皆が軽く見る人を母にする若宮は軽く見られるのである。帝は若宮を愛し、その一生を思ってその母君に対する愛情すら控えたのである。
今までの帝は「人のそしりもえはばからせたまはず」であったが、強い自制心を示すようになったのは、若宮に対する顧慮がきわめて強い結果である。